お題

大人五題

【あれは不完全な人間】　提供：リライト

あれは不完全な人間です

では逆に、完全な人間とは何なのでしょうか

私には解りません

ですが、きっと完全な人間の事を「大人」と呼ぶのでしょう

何を以って完全とするのか

私は、それが知りたいのです

私は、完全な人間になりたいのです

「大人」になりたいのです

　パタン、と本を閉じると共にため息。

「……最も、完全な人間が真の意味で完全とは思えませんが」

「うゅ？うーちゃん、何か言った？」

　どうやら、今の呟きを聞き取られたようで。自分の手元には、青い装丁の分厚い本。詩集である。適当に選んで買ったモノだったはず。

「いいえ、何もいっていませんよ。」

「それよりもっ、いつか言っていた杏仁豆腐食べに行きたいんだよう」

　そういえばそんな事を約束したような。この手の事だと覚えているのだから不思議だ。実に都合のいい記憶力である。
　丁度、自分も甘い物が食べたくなってきた所だ。幼馴染と一緒に行くのもいいだろう。間違いなく奢らされるだろうが。

「それでは、行きますか。一応目星の店は見つけておきましたよ」

「さすがうーちゃんだよう！無駄に色々と研究しているだけはあるねっ！」

　その無駄な研究を毎度毎度喜んでいるのは、何処の誰だというのか。というか、大半はこのみょんみょんな大福がもってき

「……何か失礼なこと考えなかった？」

「……いいえ？」

　何故こういう時だけ鋭いのか。ともかく、早いところ行くとしよう

「まあ…完全、という事はそこで終わりということですからねぇ」

「……？」

「只の独り言ですよ。行きましょう」

　そう思うから、私は何時までも不完全でありたい。